「一人一人が意欲的に学び筋道を立てて考える能力の育成」を目指して

                                       大阪府 前田 ゆきみ先生
1. はじめに
 本校は大阪府南部の新興住宅地内に立地し、創立22年目の中規模校である。周辺には海、山、川といった自然がたくさん残されており、保護者の学校教育に対する関心は高く、多彩な地域人材が教育活動を支援してくれている。教育目標は「自ら学び 心豊かにたくましく生きる子どもの育成」を揚げ、研究目標は「主体的に学び 共に生きようとする子どもをめざして」として、3年前から算数科の少人数指導に取り組み、全ての学年で問題解決型学習を取り入れた指導方法を研究してきた。
 そして、今年度から2年計画で「学力向上フロンティア事業」に取り組むことになり、少人数指導教員が2名配置され、担任2名と共に学年を4分割したグループ編成で指導を行っている。
 そこでまず、子どもたちの学力の実態を把握した上で「個に応じた指導法」、「指導形態の工夫」、「重点単元における指導方法の工夫」を研究の視点として、取り組むことになった。
 「学力向上フロンティア事業」では、3年〜6年までの全算数の時間での少人数指導と1・2年の週2時間の国語科での分割授業に取り組んでいるが、本実践では算数科の「数学的な考え方」を中心に検討をしていきたい。
2. 学力実態調査から研究課題設定まで
 過去2年間の少人数指導の効果をみるために「標研式CDT」を使った学力調査を実施し、その反省をもとに今年度の指導方法を検討することになった。この調査は前年度3月に実施したが、新年度を迎えてから、担任・少人数指導教員をはじめ、全教職員の共通認識を持つための話し合いを持った。まず、《学校の学力集計表》をもとに話し合った結果、どの学年も「表現・処理」「知識・理解」においては、到達度目標を上回っているが、「数学的な考え方」「関心・意欲・態度」においては、なお一層の指導法の工夫改善が必要という共通認識を持つことができた。(資料@)
 特に、《到達状況別人数》において「A」評価が予想外に多く、2年間の少人数指導の効果が出ているのではないかと考えられた。一方、「C」評価に関しては、その子どもの生活背景が大きく影響している結果であって少人数指導だけでは対応できないと考え、保護者の了解を得て少人数指導の中にあっても個人指導をする教員(主に教務主任)がついて、学習の支援をする方法をとった。また、分かる喜びを体得することが子どもの意欲向上につながるので、毎年アンケート調査を実施することを確認した。(資料A)
                    <資料@>                     <資料A>
 また、《学級S−P表》は、一人の子どもの受け止め方が教師によって違い、一人の子どもをいろいろな目で見ていく必要を感じさせるものであった。しかし、それぞれの子どもの前学年での習得度を見て、今後の指導に役立たせるのに有効であった。(資料B)
 《観点別到達度状況一覧表》に関しては、本校の前学年において「数学的な考え方」が弱いことは予想されていたが、「関心・意欲・態度」は個人差が大きく、また予想外の判定結果を示した子どももあった。しかし、「受身的で、教師の指示がなければ何をしてよいか分からない。」という本校の子ども実態を反映している結果とも受け止めることができた。(資料C)
新学期早々に、子どもたちの学力診断表をもとに、教職員の共通理解を図れたことは有意義であり、指導方法を確認するよい機会となった。
その後、「一人ひとりが意欲的に学び、筋道を立てて考える能力の育成」を算数科の指導目標にして、一人ひとりの子どもが自らの目標を持って学習に取り組み、分かる喜びを体得できるようにしていくことになった。
そのために、低・中・高学年別に指導方法の手だてを確認した。
・低学年・・・具体的な操作活動を通して、一人ひとりが楽しく生き生きと取り組むにはどうすればよいだろうか。
・中学年・・・一人ひとりが問題意識を持ち、自分なりに筋道を立て、よりよい考え方を求めるためにはどうすればよいか。
・高学年・・・一人ひとりが見通しを持ち、問題解決に当たるようにするためにはどうすればよいか。
                    <資料B>                     <資料C>
 また、指導形態においては、「全員が一律に学ぶ学習内容を確実に習得できるようにすること」を重視した無作為分割グループを編成し、少人数の中できめ細かな指導をしていくようにした。さらに、個人差に対応できるように、学習状況に応じてより高度な学習内容にも取り組む場を設定することを重視した「習熟度別学習」、さらに個に応じた指導に対応するために「課題選択別学習」を取り入れていくことになった。これらの指導形態を工夫するのに役立ったのが《学級の学力分析表》である。(資料D)
 この表の分析の結果、どの学級においても「数量関係」「計算の適用問題」が課題となっており、これらの指導場面においては、より綿密な指導方法を工夫することになった。
                  <資料D>
3. 実践例
 第4学年の「変わり方」の教材を例にして「数学的な考え方」の指導法と指導形態のあり方を検証してみたい。この教材は、関連する教材として前学年までの既習事項がないので、指導法に工夫が必要とされている。また、2量の移り変わりや依存関係をみつけることが難しいのが特徴で、最初から表を提示して書きこませ、そこから〇や□を用いた式を導き出すことは、子どもにとって理解しにくい内容である。そこで、具体物や絵や図をもとにして、自分なりの解決方法を出させ、表の持つ良さを実感できるようになってから、言葉の式をつくり、〇と□を使った式に移行できるようにしていった。また、多様な考え方を導くために最初は無作為分割グループで授業をしていった。その後、解決過程における解決方法や考え方の読み取りや個人差に対応した指導ができるように習熟度を加味した「課題選択別グループ」に分かれて指導していった。指導方法の改善は指導形態の工夫でと相俟って、さらなる効果をもたらすという仮設のもとで実践してみた。(資料E)
 ここで指導計画の2時間目の指導をもとに振り返ってみたい。なお1時間目の指導は表や式に表さず「2量の変化をいろいろな形で表すことができる。」というねらいだけをおさえた。
                  <資料E>                     
 まず、課題文をもとに問題状況を説明しながら、三角形を並べていく。それから「式でも絵でもいいから解決してみよう。」といって問題に取り組んだ。自力解決の中で、困っている子どもにはヒントカードとして、図を書いたカードに三角形を書き込ませた。自力解決後4人の考えを取り上げ比較検討した。(資料G)
この時点では、表を書く子どもはいなかった。練り上げの時点で、(資料G)の考え方を横にして、罫線を入れていくといろいろな数に対応できて便利であることを確認して表にすることができた。表の持つ良さが理解できないまま表を用いると、表を横にだけ見て1つの量にしか目が向かず、式を導き出すことはできないからだ。(資料G)
 この指導の結果、4つのグループのどの子どもも何らかの形で解決するにいたった。63名中、表だけ(3人)、表と言葉の式(26人)、表と式(34人)という結果であった。この指導法の効果については、3時間目の指導を経た4時間目の「課題選択別学習」で明らかになってきた。この4時間目は、自分の学びをもとに自分に合った課題を自己選択していくものであるが、表の良さが分かり、自分で絵や図を書きながら自分で解決する「どんどんコース」と絵や図は書けても表や式を自力で導き出せない「がんばりコース」を選択させた。その結果「どんどんコース」45名、「がんばりコース」18名という結果から表のよさを実感できていると考えた。そこで、「がんばりコース」は9名ずつの2グループ、「どんどんコース」は23名と22名の2グループで学習することになった。(資料G)
 「がんばりコース」は、9名で問題解決型学習に取り組み、全員が自分なりの考え方をだし、「たしたら同じ」「ひいたら同じ」という関係に気づかせ、式を作っていった。例題においても図や絵を書いたヒントカードをもとに、表や式を作っていった。
 「どんどんコース」は、発展的な問題を自力で解いていくもので、課題文だけで解ける子どもやヒントカードを手にしながら自分で表を作る子どももいた。どちらのコースも最後には、自分の力で解決することができるようになってきた。このように「課題選択別学習」では次々と問題に挑戦して、分かる楽しさを実感できたと考えてよいだろう。
 問題解決型学習の中で出された多様な考え方を理解し、自分なりの解決方法を出させていくことは筋道を立てた考え方を育てていく一つの方法で、また自分の学びに応じたコースを選択して学習することは、「分かる喜び」「自己決定ができる子」を育てており、実践効果があらわれていると考えられる。
<資料G−1> <資料G−2>
4. 学力向上に向けた評価方法の試み
 いろいろな指導方法と指導形態を模索しながら少人数指導を試みているが、算数科においては基本的なスキルの時間も大切である。そこで、本校では月曜から金曜までの毎日15分、《基礎問題プリント》を活用して全員が同じ課題に取り組んで基礎の習熟を図っている。また、《発展問題プリント》や《チャレンジ問題プリント》は、課題選択別学習や習熟度別学習で適宣活用している。
 その他、単元終了時のテストは観点別評価法をもとに集計している。特に、《観点別学習診断シート》では、一人一人の学習効果が把握しやすく指導のどの過程でつまづきがあったのかを振り替えることができる。そのため、1学期の学習の様子を個人別評価表にして、「数学的な考え方」に課題を持つ子どもを抽出し、今後の指導法と学習場面の設定を考えていった。また、課題選択別学習や習熟度別学習に向けた自己評価や教師による評価との関連を考えるとき、《自己評価カード》も大いに参考になった。
 評価においては、学習過程の中で、考える筋道を子ども自らが評価し、よりよく学習を進めていけるようにすることが大切だと考えている。「子どもによる評価」をさせるために学習後の感想や振り返りカードを書かせたが、それを十分子どもの指導法に生かすことができなかった。しかし、少人数の中にあって、一人一人の学習状況を評価し、個性や個人差に応じた指導をしていかなくてはならない。また、1時間の授業の中、単元レベル、あるいは1年間を通してなど、いろいろなスパンで教師は子どもの伸びや変容をとらえ、それを子どもに返していくことも重要である。
 そのため、金ROMによる個人別診断機能は、目標に準拠した評価が入力するだけで明らかになり、次からの指導に役立っていく。この機能を十分活用するためにも、少人数指導の協力体制を確立すると共に、指導担当教員を中心とした教師間の情報交換を密にすると一層の効果が期待できると考える。
5. おわりに
 少人数担当教員の配置により、一人一人の子どもの学力状況を把握して指導に役立たせることができるようになってきた。今後も、子どもによる自己評価と教師による評価、金ROMによる診断機能を活用しながら評価方法を研究していきたい。また、今年度の金ROMでの評価を「標研式CDT」に組み入れ、一人一人の子どもの学びを支援していきたい。
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