| 「習熟度別指導と金ROMの活用について」 〜小学校第5学年「小数のかけ算とわり算」を通して〜 広島県 山本 伸 先生 |
| T 習熟度別指導の概略 1.学習集団 習熟度別に指導していくためには,学習集団の編成が重要である。単元のどの時点で編成するのかという編成時期を考えることが必要となってくる。下表は,10単位時間扱いの単元を例にした指導時数と学習集団の概略である。 ![]() @型では,単元の学習内容を既得した後の復習の時間に,発展問題に取り組む発展集団と繰り返し学習などの補充問題に取り組む基礎集団に分ける場合である。A型は,単元の基本的な内容を含む分節を学習した後で,発展集団と基礎集団に編成する場合である。単元を学習していく過程途中に習熟度別指導した方が効果的であると思われる時数があればB型となる。 本実践事例はC型であり,個に応じることに焦点化して金ROMVを活用している。 2.編成手段 習熟度別に集団を編成する場合には,児童生徒の自己選択,または指導者による既習内容の定着度の見取りがある。それぞれの編成手段と上述C型との適否は以下の通りである。 まず,未習内容に見通しが持てない児童生徒が自己選択をすることは困難である。事前に単元の詳細を説明するガイダンスを設けることも考えられる。しかし,個々の選択基準を統一することは難しいので,児童生徒の自己選択では,「習熟している」「習熟していない」の集団にはならない。 次に,既習内容の定着度を指導者が評価するには,授業中の観察などで蓄積された評価を根拠にすることができる。既習が遠くない過去にある@〜B型では,指導者が行う評価も児童生徒の自己評価も容易である。既習が前学年にあったとすると,ほとんどの指導者は授業をしていないことになり,児童生徒には当時を思い起こして自己評価させることになる。 そこで,児童生徒に既習内容が身に付いているかどうかをあらためて評価し,その結果から児童生徒に自己選択させることが考えられる。つまり,レディネステストによって診断的評価するとともに,児童生徒に選択基準の根拠を与えることである。 U 事前分析 1.入力 (1)単元登録 レディネステストの成績を入力できるように,あらかじめ「単元登録」を行う。事後分析において日本標準の単元テストの結果と混同しないように,自作共通で単元名を「小数のかけ算とわり算R」とした。 (2)テスト問題登録 テスト問題の登録は,「観点別テスト問題登録」と「設問別テスト問題登録」の2種類がある。多面的な児童実態分析のためには,「小問別反応表」「S−P表」などの資料が得られる「設問別テスト問題登録」が必要である。 (3)結果入力 レディネステスト実施後の結果は,先の「設問別テスト問題登録」により可能となった「設問別○×入力」をする。 2.S−P表 (1)S曲線による基準 「小数のかけ算とわり算R」のS−P表を下に示す。 ![]() S−P表には,S曲線(黒線)とP曲線(朱線)が描かれている。S曲線が水平方向に長くなっているところが基準となる。この母集団を2つの集団に分けるとすれば,その範囲は正答数15以上の発展集団と正答数11以下の基礎集団が望ましい。 具体的には,S曲線が水平方向に最も長くなっているところを基準にすると,発展集団は児童「ほ」より上位の29名であり,基礎は児童「ほ」1名のみとなり,教育的に好ましくない。次に,S曲線が長いところを基準にした場合,児童「の」より上位の24名が発展集団,児童「の」以下6名が基礎集団を形成することになる。 (2)ガイダンス これから学習していく単元に必要な学力の定着度をレディネステストで調べたことを児童に伝えることが重要である。一人一人が自らの結果を基準に照らし合わせながら集団を選択できる客観性を持たせるようにする。そのために,コース選択カード(下参照)に記入して自らのレディネスについて客観的に判断させた。 ![]() 以下は,ガイダンスの一部である。 ============================================ T:これから「小数のかけ算とわり算」という単元を学習していきます。このテストの問題ができていれば,「小数のかけ算とわり算」の学習も簡単にできると思います。 C:100点じゃないといけないの? T:いいえ。いつも言っているように全問正解でなくてはいけないということはありません。 C:何点くらい? T:70点あれば発展問題にも取り組めると思います。70点以下でも,教科書に出ているような問題ができるように復習を取り入れながら授業をしていきます。 C:よかった T:発展問題ができると思う人はA(発展集団)コース,復習しながら学習しようと思う人はB(基礎集団)コースを選んで下さい。 ============================================ レディネステストの問題内容の詳細については述べないが,「数学的な考え方」「表現・処理」「知識・理解」の3観点で構成するとともに,記述の解答形式も含んでいる。また,CDTのように問題を事前調査することができないので,正答率80%以上がA,60〜80%がB,60%未満はCというように常に決まった基準を示すことは困難である。 (3)基礎集団の重点 基礎集団6名のうち5名以上が誤答または無答であったレディネスについては,特に重点的な補充または手立てが必要であると考えた。該当の問題については,以下の表にまとめている。 ![]() V 実践 1.指導計画 ![]() 2.単元の観点別評価規準 ![]() 3.本時の授業 (1)日時 平成16年6月14日(月) (2)場所 本校少人数教室 (3)題材 問題「0.2?のジュースを6パック買いました。ジュースは全部で何?ありますか。」 (4)評価と観点 整数の乗法の性質を活用して,単位小数のいくつ分かで小数の乗法の仕方を考えることができる。 【数学的な考え方】 (5)仮説 既習内容から,計算しやすい数の単位を見つければ,小数×整数を整数×整数として考えることができるであろう。 (6)指導展開 ![]() (7)授業の実際 T:今日から「小数のかけ算とわり算」の単元です。かけ算やわり算に小数が入るとどうなるのかを学習していきます。 T:問題です。「0.2リットルのジュースを6パック買いました。ジュースは全部で何リットルありますか。」 C:式を考えないといけないんだろうけど分からない。 T:式は後回しにして,ジュースは全部でどれくらいだと思いますか? C:給食の牛乳(瓶)が0.2?だったよね? C:じゃ,1リットルより多くなるなぁ。 T:たぶん,頭の中で牛乳瓶が6本並んでいる場面をイメージしていると思います。そのイメージで,問題場面を図にしてかいてみましょう。 C:ちゃんとパックのようにかかないとダメ? T:面倒だね。四角でも丸でもいいよ。 C:(下図のように0.2のまとまりが6つ並んだ図を書いている。) ![]() T:みんなの図には,同じものが6つあるね。 C:式ができるよ!同じものが6つだもん。 C:(全員が一斉に式を書き始める。) T:式が分からないと言っていたのに,できたの?誰か発表してくれるかな? C:0.2×6です。 C:僕は,6×0.2にしました。 T:どっちかな・・・?(悩む演技をする) C:かけ算の式の最初(被乗数の位置)には,並んでいる同じものがきます。「×」の記号の後ろ(乗数の位置)にいくつあるかがきます。 T:よく覚えていましたね。整数のときに,数を入れ替えて計算しても答えは同じになったけど,問題を図にして式にすると,0.2×6ですね。 C:(全員が納得する) T:かけ算の式なんだけど・・・。 C:かけられる数が小数になっているよ。 T:「小数×整数」の形になってるね。これを,どう計算していくか考えないと答えが出ないね。 C:(困った様子で沈黙) T:みんな,2×3はできるかな? C:6。簡単じゃん。 T:ほぅ,簡単だった?じゃ,20×3はできるかな? C:60。これも簡単じゃん。 T:すごいね!「2×3」は九九だから,すぐ答えがでるけど,「20×3」は九九じゃないのに,なんで答えがすぐに出てくるの!? C:「ニ三が六」で「0」を付けるだけだもん。(全員が得意げな表情をしている) T:えっ?「20×3」も「2×3」で計算できるの? C:十の位の「2」と「3」をかけ算した。 T:20を「2」として計算するんだね。十の位の「2」には,どんな意味があるんだったかな? C:10の2個分。 T:「10の2個分」を図にできるかな? C:こうなるよ。(下図左) ![]() T:その図が3セットあれば,20×3と同じだね。 C:(図をかきたして上図右になった。) T:この図からは「2×3」が思い浮かぶね。 C:縦×横でIが6個あるという計算だ。 T:そうですね。十の位にある「2」で九九をしたのは,Iが6つあるという計算でした。 T:0.2×6は,「2」が小数第一位にある意味を考えれば,同じように「2×6」で何とか計算できる? C: うん,できそう! T:じゃ,「二六」になるように考えようね。(ここで課題を板書した。) C:(自力解決している。下図は,その一例) ![]() T:2×6=12なんだけど,「0.2×6」の答えは・・・・「12」か「1.2」か「0.12」か,どれだろう? C:12じゃないよ。 T:そうだね。 C:答えは,1.2です。 T:なぜ? C:「12」は,0.1が12個あるということだからです。 T:0.1がいくつあるかで計算していくと,「2×6」で計算できるね。整数で計算した答えの位が一つ下がって小数にすれば,小数×整数の答えになるね。(まとめを板書した。) T:算数日記を書いて終わりましょう。 3.検証 (1)問題 単元末テスト(日本標準)とは別に検証テストを実施した。第1時(本時)の学習が身に付いたか,また,第2時以降の内容に生かされているかを検証するための問題は次のとおりである。 ![]() (2)結果 基礎集団6名における問題@および問題Aの正答率は以下のようになった。問題Aの正答率が比較的に低かったことについて,「(3)考察」で後述する。 問題@・・・正答率5/6 問題A・・・正答率3/6 (3)考察 検証テスト問題@および問題Aの正答例と問題Aの誤答の実際を下に示す。 正答例 ![]() 誤答ア ![]() 誤答イ ![]() 誤答ウ ![]() 誤答ア〜ウに共通していることは,形式的な計算技術として記述していることである。「2(7)授業の実際」のように0.1を単位として考えた過程が大切であり,「小数点の位置をそろえてうつ」のは表面的な結果にしかすぎない。しかし,小数点をうつ位置は被乗数の真下であることは事実である。 ここで誤答とする理由は,次系統で被乗数,乗数,ともに小数の計算を考える際に混乱を生じさせる可能性があるからである。「小数×小数」の計算では,「0.1のいくつ分」という考え方は用いることができないが,立式から整数として計算し,安易に小数点をうつ位置のみを探るような展開があるとすれば,「小数点の位置をそろえる」こととの整合性を欠くことになる。 単元で指導しなかったことが検証テストに表れた要因にドリル学習がある。算数ドリルや計算ドリルなどには,計算技術の理解・習得という第一義のねらいがあると思われる。そのため,機械的に計算ができるようになる工夫がある。本校で使用しているドリル教材に見られた工夫と誤答ア〜ウの表現が一致している。 おわりに 本年度から習熟度別指導に金ROMVを活用しながら実践している。本事例では述べることができなかったが,単元末テスト(日本標準)の事後分析も行いながら,日々の授業改善に役立てているところである。教育改革による多忙化・煩雑化する学校現場において,多面的な視点の資料を得られることは大いに作業時間の軽減につながっている。 金ROMVに含まれる多数の機能のほとんどを知らない。これから興味・関心が向くものに「個人別学力診断シート」「指導要録記入資料」がある。金ROMVと学校あるいは指導者との絶対評価観がどこまで基調しているのか楽しみである。 今後の日本標準の躍進と金ROMWの開発を祈願して閉じさせていただきたい。 |
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