教材活用特集号 臨時増刊号 (2007年1月発行)
CONTENTS
「教育再生」を徹底反復で!
       陰山英男先生
        立命館大学大学教育開発・支援センター教授/立命館小学校副校長
     「個人診断票」で学力向上!
        大分県竹田市立祖峰小学校
     プリント・テストで培う確かな学力
        茨城県鉾田市立巴第一小学校
     地域で取り組む学力向上「生活改善・学力向上プロジェクト」
        山口県山陽小野田市
     「音読」で朝を元気にスタート!
        静岡県磐田市立豊田南小学校
     「DIGITALさんすうせっと」で授業革命!
        宮崎県児湯郡新富町立富田小学校  木下浩利先生
内容の一部紹介
  「教育再生」を徹底反復で!

    陰山英男先生
        立命館大学大学教育開発・支援センター教授/立命館小学校副校長


 2006年10月に発足した新内閣の閣議決定により、教育再生会議が設置され、教育の大きな枠組みについて議論が進められています。2007年1月には、その中間まとめが発表される予定です。会議は、17人の有識者によって構成されていますが、メンバーの一人である陰山英男先生(立命館大学大学教育開発・支援センター教授/立命館小学校副校長)に、「教育再生」の方向についてお話を聞きました。(聞き手「新しい教育(金ROM広場)編集部」)

●教育再生会議で議論されている内容を大まかに整理して、お聞かせください。
陰山 「教育再生」のための施策がいろいろ提案されていますが、それらの是非を一つひとつ決めるというのではなく、地域の実情に合わせて、地域の問題は地域で解決していこう、という方向付けがなされていくのだろうと思います。いろいろな立場の人が集まって教育再生会議では議論をしているわけですが、だいたいは合意できていますが、溝として残る部分も当然あります。
 そうした背景には地域の違いというものがあります。背負っているものが、地域ごとに違っていますから、全国一律に一つの方法で解決していくということはできなくなっているように思えるのです。ですから今後は、地域が主体となって指導を行い、問題が起こった場合に、文部科学省が調整をする、という形になっていくのだと思います。
 授業時間数を増やす方向は確認されつつありますが、「どういう方法で」という議論まではしていません。これらのことも含めて、地域ごとに決めていくことになるのではないでしょうか。もちろん、授業時間数まで含めて地域・学校に委ねるということは、学校や地域によって教育内容が違ってくる可能性があるということです。
 会議の中で合意していることとしては、「経済の格差によって教育の機会の均等がうばわれることがあってはならない」ということです。私は、公平性を担保するためにも、「何を指導しているのか、何を指導しなければいけないのか」ということを、国民の前にきちんと明らかにすることが重要だと思っています。言い換えれば、皆が学習指導要領の中身を知っている、ということです。その部分がないと公平性も何もないわけで、そうしないと「子どもを伸ばすにはどこの学校へ行ったらいいか」という話にすぐになってしまうわけです。国として、子どもたちに何を学ばせるかということが重要なのであって、どこで学ばせるかという学校選択の問題になってしまってはいけないと私は考えています。 教育再生会議にいていつも注意していることは、現場との溝を少しでも埋めることです。かつての臨時教育審議会や教育改革国民会議以来、学校現場の人の参加は少ないですから。ただ、この間のさまざまな事件の連続により、教育の現場が、国民からの信頼を失ってしまっているという事実があります。それが原因となってなかなか溝が埋められないということを強く感じています。そのことを、私はきちんと受け止めなくてはいけないとも考えています。

●話題となっている免許更新制と教育バウチャー制度について、陰山先生の考えはいかがでしょうか。
陰山 免許更新制やバウチャー制度など、これらが現場の指導をいいものにしていくという根拠はどこにあるのか、と思います。現場の教師の第一の願いは、もっと子どもにかかわらせてほしいということです。そのことを社会は知っているのだろうか、といつも思っています。ただ、免許更新制については、すでに中央教育審議会でも議論がされて、具体的な仕組みについてもまとまりつつある段階まで来ています。どのような制度にしていくかを決める段階です。私としては、どうしてもやらなければならないものなら、少しでも現場の負担にならないものをと考え、発言しています。
 私の考えでは、「どこかの教育大学に行って、30時間程度の座学で研修する」というような形式的なものではやる意味がありません。もっとオープンな形にして、いろいろな現場に出て行って、教職の学習の再構築ができる形を考えなくてはいけないと思っています。
 学習指導要領の中身についても、教育の専門家ではなく教科の内容の専門家、つまり学会の人たちを入れて、何を学ぶ必要があるのかについての議論こそが重要だと思います。議論の中でそのような発言をされた方がいますが、免許更新制を考える上でも、重要な視点だと思います。
 教育バウチャー制度は、メリットもあるのかもしれませんが、あまりにもリスクは大きいように思います。これは会議の中でも、意見として最後までまとまりにくいもののような気がします。先ほど言いましたように、地域によってその制度を採用することができるようにする、という形で落ち着くのではないでしょうか。
 教育の制度は一定成熟しているものですから、過激なことを一律にやっていく必要はないのです。大きな変化を伴うようなことは、慎重に実験的にやってみながら、検証していくというのが良いと思います。私たちに最もフィットするやり方を試行錯誤しながら探していくのです。

(以下略)
   「個人診断票」で学力向上!    大分県竹田市立祖峰小学校

 大分県竹田市は、岡城跡、武家屋敷、瀧廉太郎記念館などの多くの史跡や文化財をかかえ、長い歴史と伝統が感じられる街です。祖峰小学校は、竹田市の南部に位置し、祖母山の雄大な景色の広がる自然豊かな場所にあります。少子化・高齢化の波の中で、児童数は年々減少していますが、地域の人たちの祖峰小学校に対する期待や願いは大きく、学力の向上を基本にすえた、地域に開かれた学校づくりを積極的に進めています。

●祖峰小学校の取り組み
 祖峰(そほう)小学校は、1999(平成11)年4月に、入田(にゅうた)小学校と嫗岳(うばだけ)小学校の統合により、開校しました。その後、2003(平成15)年4月に、宮砥(みやど)小学校と統合し、新生祖峰小学校として発足しました。祖峰小学校の児童数は、現在51名です。児童数の減少によって2006(平成18)年から単式学級4と、2・3年生の複式学級1の合計5学級という構成です。しかしながら、教職員の協力体制によって、主要教科での単式授業を確保し、合同授業のよさを生かした体験学習なども工夫して、「わかる授業・楽しい学校づくり」に努力し、小規模校に対する保護者の不安をとりのぞき、地域に信頼される学校づくりに取り組んでいます。
 地域の信頼を得、新しい校風を確立していくには、統合の第一の目的であった児童の学力保障(基礎学力の定着と磨き合う授業の工夫)が最大の課題であると位置づけ、確かな学力の向上を目指して、すべての教職員の方々が一丸となった取り組みを進めています。
 2004・2005(平成16・17)年には、大分県のリーディングスクール(注)の指定を受け、研究を続けてきました。
 また、基礎・基本の力を定着させていくためには、基本的な生活習慣の確立が重要であると考え、家庭の理解・協力を得ながら、「はやね はやおき 朝ごはん」の合言葉のもと、生活習慣の改善に向けた連携・体制づくりにも取り組んでいます。
(注)大分県教育委員会「リーディングスクールによる取り組み」
 平成16・17年度を第1期、平成17・18年度を第2期として、大分県全体の課題に対応した取り組みを指定校(リーディングスクール) によって研究を進めています。第1期では、1.学習内容の習熟の程度に応じた指導の在り方、2.少人数指導や複数の教師による指導の工夫改善、3.学習状況を的確に把握する方法の工夫が研究課題として設定されました。

●2006年度の教育目標と重点
 以上のような経緯を踏まえ、2006年度は、つぎのように目標を定めています。
《学校教育目標》
 心身ともに健康で、自ら学びたくましく生きる 人間性豊かな祖峰っ子の育成

●チャレンジタイムの取り組み
 祖峰小学校では、基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るため、以下のような3つの形での「チャレンジタイム」を設定して、取り組みを進めています。2004(平成16)年の途中から始めた「チャレンジタイム」ですが、現在では基礎・基本の学力の確実な定着に大きな効果が現れています。

(以下略)
  プリント・テストで培う確かな学力     茨城県鉾田市立巴第一小学校

 茨城県鉾田市は、太平洋に面した茨城県中央部に位置し、2005(平成17)年10月11日に町村合併により誕生した新しい市です。巴第一小学校は、市の北西部にあり、稲作と畑作を中心とした純農村地帯にあります。巴第一小学校では、プリントやワークテストを活用した学力の向上に取り組んでいます。

●巴第一小学校の学校経営
 巴第一小学校では、2006(平成18)年度の教育目標と具体的施策を以下のように整理しています。
【本校の教育目標】
 一人ひとりの個性を伸ばし、よく考え、正しい判断のできる心豊かな児童を育てる。
【めざす学校像】
○笑顔・笑い声が響きあう温かい学校
○目標に向かって成長する明るい学校
○互いに信頼し合える楽しい学校
○清潔で落ち着いたきれいな学校
○家庭や地域に開かれた学校
《一人ひとりを生かす創意と活力に満ちた学校》
【めざす教師像】
○心身ともに健康で情熱のある教師
○研修に励み分かる授業をする教師
○児童愛に満ちた感受性豊かな教師
○子どもの生命・健康安全に気を配る教師
○保護者や地域から信頼され親しまれる教師
【めざす児童像】
○進んで学び考える子
 人の話をよく聞き よく考え 自分の思いを表現できる
○思いやりのある子
 礼儀正しく 親切で 進んではたらくことができる
○じょうぶでたくましい子
 少しのことでくじけないで 最後までがんばりぬくことができる

●学力向上のための具体的方策
 学力向上の具体的な方策を、以下の内容に基づき推進しています。
○基礎的・基本的内容の確実な定着を図り、個に応じた多様な指導方法の工夫改善に努める。
・月例テスト等により基礎基本の定着を図る。
・地域の自然、歴史、文化、人材等を活用した学習の充実を図る。
・繰り返し指導や習熟の程度に応じた指導により、個に応じた指導を行う。
・豊かな情操と学習の基礎である読解力を養う読書指導をより一層推進する。

 農村地帯にある巴第一小学校は、児童の通塾率も低く、学力の向上と定着が最も重要な学校の課題であるとの全職員の共通理解のもと、学校経営がされています。また、下校に関わる安全上の問題から、放課後の補習をせず、時間内の授業の中で一人ひとりの状況に応じた指導を実現していくことにも力を注いでいます。
 そのために、2006(平成18)年度は、全教員による校内授業研究を行いました。6、7、10、11月に算数の校内授業研究を設定し、そこでは「個に応じた学習指導法を工夫し、『解決の喜びや達成感の感じられる授業』が展開できるように、指導技術を向上させる」ことをねらいとしました。
 国語と算数の授業では、TTのための非常勤講師が配置され、きめ細かい指導のための体制が作られています。
 また、家庭における学習を習慣化させるために、宿題を重視していることも特徴です。国語の教科書を家庭で読むことを毎日の課題としつつ、それ以外にドリルやプリントの実施が宿題として欠かさず出されています。

●月例テストの実施
 巴第一小学校では独自の「月例テスト」を実施しています。今年度は、4、5、6、9、10、11、1、2月の8回の実施を計画しています。この「月例テスト」は、漢字と計算の基礎学力の定着を確認するために全校で行っているものです。各学年の先生方の自作による「月例テスト」は、たとえば漢字では、低学年では25問、3年生以上は50問の出題で構成され、90点以上が合格と設定されています。90点未満だった場合には、全員の合格を目指して、再度全問に挑戦し、合格するまで何度も繰り返すという方法がとられています。子どもたちの達成感を大切にしようと、テストに合格すると「合格シール」がもらえます。学期を通して「全て満点」あるいは「全て合格」の場合には、賞状が渡されます。

(以下略)
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