徹底反復研究会 公開セミナー![]() |
| 日本標準教育研究所は、徹底反復研究会と共催で、2007年1月7日に京都府の立命館小学校において、「公開セミナー『教育再生』を徹底反復で!」』を開催しました(後援:京都市教育委員会、立命館小学校、株式会社日本標準)。現在、政府の教育再生会議で教育改革に関わる議論が進められていますが、「教育の再生を、徹底反復による学力向上で果たしていこう」という趣旨のもと開催したセミナーです。当日は、近畿圏を中心に約250名の先生方が参加され、終始熱気のあふれたものになりました。6人の講師の先生方が話された内容をダイジェストで掲載いたします。 |
| 「教育再生」を徹底反復で! 陰山英男先生(立命館大学大学教育開発・支援センター教授/立命館小学校副校長) |
現在、教育再生会議でさまざまな議論がされていますが、私自身がその議論に参加して思うことは、最終的には、先生方、教育委員会、あるいは地域が、現状をどのように受け止めるかにかかっているのではないか、ということです。つまり、教育再生会議といっても、大きな枠組みを議論し、改革の中身を決めていく場ですから、教育の現場を変えていく主体者は私たちだということです。まず、現状を正確に認識することが大切だと思います。たくさんの情報が流れています。例えば、教師の力量が下がったから学力が低下したのだというようなことが言われています。けれど、このようなことはありえないことです。中学校の教科書で3か国しか教えない状態のなかで、どのように学力向上ができるというのでしょうか。そもそもそういう教科書に誰がしたのか、その責任追及をする声は残念ながらどこにもありません。 ところが、学校現場にだけ責任が押し付けられているのが現状です。しかし、この現状から、どのような力が学校現場にはたらこうとしているかということを、正確に予測することが重要です。亡くなられた私の恩師の岸本裕史先生が非常に偉大であったのは、この点です。単純に教材方法とか指導方法だけを提起するのではなくて、それが日本の社会にとってどのような意味があるのかということを絶えず私たちに示してくださいました。そのことによって、その時々のさまざまな情報をうのみにするのではなくて、自分たちの考えで行動することができたのです。 一方で、教育再生会議の議論は速いスピードで進んでいます。したがって、早い段階で、学校現場から何らかのメッセージを送らないと、マスコミ的な情報をベースに、さまざまなことが決まってしまうということになってしまいます。学力低下と言われてますけれど、最新の学力テストのデータでは、読み書き計算の部分を中心に、V字上昇を示しています。学力低下の状況は改善され、はっきりと学力向上の方向に動いているというのが、私の分析です。ところが、学校の先生ですら、まだそのことについて知らないということもあります。その結果対応がずれてきます。私たち自身がこういう場を通じて、情報交換をしながら、現場から情報発信をするということが決定的に重要だと思っています。 教育再生会議の最重要テーマは、教育の推進力をどこに持たせるかということです。いくつかの意見が出てきていますが、私が見ているかぎり最終的には三つに集約されるだろうと思います。ひとつは、教育の推進力を国に持たせるということ。もうひとつの考え方は、コミュニティ・スクールということで、地域に委ねるという考え方。そして、三つめが、教育の推進力を市場原理に委ねるということ、いわゆるバウチャー制度です。 教育の推進力を考えるときに問われることは、教育の成果です。そして、その第一位は学力の向上です。私もしかけをしておりまして、この後お話をしていただく山口県の山陽小野田市とか、広島県尾道市では、学力向上がかなり進んできています。2、3年間の間の急激な学力の上昇がデータとしてはっきりと出てきています。山陽小野田市と尾道市の実践を、文部科学省の方に見ていただいて、学力向上の方法のベースとして定着させていきたいと考えているのです。現場がリードをして、学力向上を中心とした教育改革を成し遂げていくことこそ、私たちがやりやすく、最も望むべき方向ではないかと思います。きちっと成果を出し、それをアピールして、社会的に受け入れられるものを創っていきたいと思います。 学力向上のためにすぐに取り組むべきことを3点にまとめました。 1.「早寝・早起き・朝ご飯」の生活習慣を確立して、子どもたちを元気にする。 2.一度学習をして覚えた後、定着の期間を持つようにする。繰り返すことによって、完全に定着をさせることが大切。 3.漢字の前倒し学習によって、漢字の学習に重点をおく。漢字がわかればいろいろなものが読めるようになり、次々と知識が入ってくる。早い段階で漢字の力をつけられれば、後の学習がしやすくなる。 以上のことは、自分自身は、単に効果だけを頼りにしてたどり着いた方法ですが、この半年間、いろいろなところの実践を客観的に見させていただいてわかってきたことです。 どうかそれぞれの職場、教室でがんばっていただければと思います。 |
| 地域で取り組む「生活改善・学力向上プロジェクト」 江澤正思先生(山口県山陽小野田市教育長) |
山陽小野田市では、「生活改善・学力向上プロジェクト」に取り組んでいます。家庭では、「ストップ・ザ・テレビ・ゲーム・インターネット」、「早寝・早起き・朝ご飯」、学校では、モジュール授業による読み・書き・計算の徹底反復に取り組んでいます。このプロジェクトの目的ですが、一言で言えば、今の教育問題の根本原因に正面から取り組むということです。「根本原因」と言っても、さまざまな教育学者の方がそれぞれに言われていますが、結局は、今の若者・子どもをどう見るかということではないかと思います。心の安定、自制力、協調性とか無気力・無関心・モラルといったものが変化してきているのではないかと思っているのです。その原因は、社会構造の変化にあるのだと思いますが、それに晒されて変化した子どもたちをどう育てるかだと思っています。 具体的な取り組みといたしまして、家庭と学校の二つの柱があります。家庭では、生活習慣の改善項目を具体的に示して、その改善に取り組んでいただき、“心と体の土台作り”をしてもらいます。学校では、読み・書き・計算の徹底反復学習を、学習の準備体操と位置付け、“学習のための脳と心の土台づくり”を行います。そしてお互いに、まずそれぞれの役割を徹底して果たしていただくことをお願いしています。その上で、学校は家庭へ学力面では子どもをこれだけ伸ばしましたという報告をし、家庭は学校へ子どもの生活習慣をこれだけ改善しましたという報告をしてもらいます。この関係が機能すれば、本市の目標である、「自分の将来に明るい希望を持つ元気な子どもを育てる」ことに近づけるのでは考えています。 もうひとつの目的は、公教育をシステムの力で再生するということです。社会全体を対象として変えていくにためは、公教育を変えなくてはだめだと思います。また、なぜシステムかということですが、個々のクラス、学校、教師、校長に依らないということです。優秀な先生が成果を上げ、優秀な校長が成果を上げるのは普通のことです。そうではなくて、バラバラのいろいろな人がいる中で、システム(組織・方法・仕組み)で、全体を上げることができないかぎり、本当の意味で再生することはできないと思います。本市では、義務教育で格差を作らないという思いで全校で取り組んでいます。 取り組みの結果ですが、各種の調査の結果、生活習慣と学力の間に、顕著な相関を見ることができます。家庭での生活習慣の改善も、非常に大まかには30%近く改善しています。モジュール授業による学力向上も、少しずつ結果がでてきています。2年生から6年生まで全員で行った漢字の定着率調査では、平均として9月下旬には34%だった定着率が、12月上旬には66%へと上昇してきています。 |
| 実践セミナー「モジュールで鍛える基礎学力」 |
| セミナー1 モジュール授業の進め方 藤井弘之先生(広島県尾道市立土堂小学校教諭) |
私は、モジュール授業の概要についてご説明いたします。モジュール授業とは、徹底反復学習のみを実施する授業のことです。これによって子どもたちの「基礎的・基本的な力の向上」と、「学習に対する集中力の向上」が図れると考えております。 本校では平成15年度の3学期よりモジュール授業を導入いたしました。モジュール授業は、年間を通して火曜、水曜、木曜の1時間目に実施しています。1年生は、入門期ということもありまして、2学期からモジュール授業に取り組んでいます。モジュール授業は、45分間の1単位時間を15分間ずつ、3つのユニットに分けて、国語科的内容を15分、算数科的内容を15分、そして学級の裁量の時間が15分で、計45分間の徹底反復学習を行っています。それで、授業時数へのカウントとしては、火曜、水曜、木曜に国語が15分×3で45分間、つまりこれで国語が1時間。算数も同様に1時間になりますので、授業カウントは火曜日の1時間目が国語、水曜日の1時間目が算数、木曜日の1時間目が学級の裁量の時間で、私なら英語をやっておりますので、木曜日の1時間目が英語と、授業カウントをします。 導入に際してはいろいろ議論のあったモジュール授業ですが、結果は大正解でした。 指導者側の立場からモジュール授業導入の効果として、徹底反復学習のバリエーションが増えたことと、指導者の意識が変化したことがあげられます。 子どもの側の立場からモジュール授業導入の効果をみると、広島県の学力調査や漢字検定等の結果において、具体的な数値として出てきました。 モジュール授業によって脳の力がアップし、子どもたちは、どんどん知識を吸収していくようになります。その結果、授業がずいぶん高速化していったように思います。モジュール授業導入時には、35時間のマイナスをどうするかという心配があったのですが、おつりがくるとまでは言わないまでも、授業時数の点では問題はありませんでした。モジュール授業によって培われた集中力は、特に人の話を聞く時の態度にあらわれていると感じています。 モジュール授業の実施にあたっては、「教室内の集中した雰囲気」「スピード感、テンポのよさ」「集中した雰囲気、テンポの良さから生まれる好回転スパイラル」「子どもを見る力」の4点に留意をしていただきたいと思います。 そして、子どもたちが元気であるという土台が何よりも重要です。早寝・早起き・朝ごはんを中心とする子どもたちの生活習慣の改善が、モジュール授業を成功させる土台なのです。 |
| セミナー2 100ます計算・漢字前倒し学習 桑原健介先生(福岡県水巻町立猪熊小学校教諭) |
モジュール授業の中で行う「100ます計算」と「漢字前倒し学習」についてお話しいたします。この二つは、私自身の学級経営の基盤になっているものです。これを実践することにより、目の前の子どもたちが変わります。子どもたちは、とても落ち着いた感じになり、ほんわかした感じになり、でも勉強はバリバリやり、外で元気に遊ぶ、というふうになります。私はその姿を見ながら、さらに100ます計算や漢字の徹底反復にのめりこんでいく、というふうになってきています。高学年における「100ます計算」の実践ですが、B4の用紙1枚に、表裏を使って、足し算2回、引き算2回、かけ算2回、あまりのある割り算100問、計700問を印刷しておきます。そして、それぞれ、3分、3分、3分、5分として、15分の中で終えるようにします。これを毎日毎日やっていくのです。4月の段階でいちばん初めのタイムは必ず記録しておきます。そして、「大丈夫だよ。今できなくても。すぐに伸びるからね。1週間もしたら半分になるよ。2倍に解く量が増えるよ。これをやっていくとね、脳が変わっていくんだよ。」と 励ましながら進めていきます。 また、規律をつけていくためにやっていく、という側面もあります。プリントを配るときも、「どうぞ」「ありがとう」「どうぞ」「ありがとう」と声を出します。最終的には先生がストップウォッチを上にかざしたら鉛筆を持って用意、ボタンを押したらスタートさせます。これは先生を見ないといけませんから、子どもたちは先生の方を集中してみるようになります。 漢字の前倒し学習につきましては、「○年の全漢字練習(日本標準刊)」を使っています。 最初に取り組んだときは、45分間漢字の学習ばかりいたしました。荒れた学級の中で、集中力、規律、我慢強さ、といったものを培っていきました。今年度は、4月25日にとりあえず1学年分の漢字の学習を終えました。全部終わったあとは、徹底反復です。こうすることで、確かな漢字の力を付けることができています。 |
| セミナー3 音読 森下理奈先生(広島県尾道市立土堂小学校教諭) |
私は、音読の意義を「元気が出る」「脳が活性化する」「一人ひとりがしっかり声を出すことができる」「声を意識することができる」「文がすらすら読める」「記憶力が向上する」「美しい言葉、良い言葉が身体にしみ込む」と考えています。音読指導のポイントを7点にまとめました。 まず、「姿勢」ですが、合言葉は“足はぺったん、背中はぴん”です。しっかりと両足に体重をかけて、手はかたかなのハの字にして足の付け根にピッとつけるようにします。「大地からエネルギーをもらうよ!」と子どもたちに言っています。立って音読しても良いのですが、私のクラスでは落ち着いて音読したいので、座って音読しています。 次は「口形」です。手で口形のイメージをつけながら、正しく、くっきりと口を開けます。 3番目は「発音」です。音読指導によって、日常の会話が全てアナウンサーのようになるわけではありませんが、教師が手本を示し、児童にも正しい発音を常に意識させることで少しずつ変わってきます。 4番目に「発声」です。“明るく、いきいきと”した声を目指します。おなかの底から出た、力強いピリッとした声を意識して発声させるようにしています。 続いて「区切り」です。言葉は、1文字ずつの並びではなく、「まとまり」として捉えることを大事にしています。 さらに「テンポ」です。リズミカルにテンポよく音読したいので、モジュールの15分間はリズムに乗れる詩を選んでいます。 最後に「評価」です。評価といっても、記録簿にABCを付けるということではなく、今の状態が良いのか悪いのかということを、常に子どもに返すということです。最終的には児童自身が、今のは良いのか悪いのかということを評価しながら進めていけるようにすることが大切だと思っています。 悪いと評価したときにはやり直しをさせます。私は、やり直しをさせるときには「変わるまでやらせ、変わった瞬間に褒める」ということを意識しています。やり直しをしても変わらないのに、「いいよ」と言ってしまうと、聞いている他の児童もそれでいいのだと思ってしまいます。変わる可能性が見えるときには、必ず変わるまでやらせ、変わった瞬間に褒めるのです。 このようなことを毎日繰り返していくと、クラスでの“良い音読”の共通イメージができ、クラスが引き締まってきます。 |
| セミナー4 小学校1年生からの辞書引き 深谷圭助先生(立命館小学校教頭) |
私は、小学校1年生からの辞書引きについてお話しします。この実践を始めてもう13年くらいになりますが、だんだん進化してきて、立命館小学校でも定着しつつある実践です。辞書引きについての要点は、以下の3点に集約されます。 まず一点目は、辞書は「引き方」から教える、という指導が普通に行われていると思いますが、この指導方法は「教育的」なのかということです。 第二点目ですが、なぜ3年生から辞書を引かせなければならないのかということです 三点目は、結論めいていますけれど、辞書引きの最終的な目標は「自学力」を育てることです。自分から学び続けていく、そういう子どもに育てたいという、私自身の問題意識からこのような実践をスタートしているということです。 現在の教科書では、国語辞典の指導は、「どんな順序で引くか」という指導です。見開き2ページの中で、引く場面をあまり保障しない構成です。漢字を学習するにしても、国語辞典を活用するにしても、引き方だけを教えるのではなくて、辞書を引かせていくための前後を考えていかなくてはいけない、というのが私の主張です。 国語辞典の指導は、以前は、4年生で引き方を教えて、5年生で引いて、6年生で引く習慣をつけるという、単純な指導でした。そうではなくて、日常的に辞書を引くことで、自ら学ぶ、自ら調べる態度が身につき、言葉の力がつくと考えているのです。 語彙を増やしたり、自ら学ぶ習慣をつけるためには、1年生から辞典類を活用することが重要だと思います。書き言葉は1年生から学ぶわけですし、自ら学ぶ習慣というのは早く身につけたほうがいいからです。そして、引き方だけではなく辞書を自由に読む、自由に引かせる場面を大切にするということが重要だと思います。そのテイストとして、付箋をつけるという行為があります。付箋をつけるということは、自分が引いた学習の努力の足跡が見えるということで、非常に有効です。付箋に番号を書いていくことで、自分がどれくらい引いたかということが、自己満足感につながっていきます。 全国いろいろな学校で、この取り組みが始まっていますが、かなり普遍的な効果が出ているということです。最終的には自ら学ぶ態度が重要です。それが生涯にわたって学び続けていく力になると思います。 |
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