徹底反復研究会 学力セミナー in 博多![]() 1年間で確かな学力を定着させるための実践セミナー |
日本標準教育研究所は、2007年3月28日に福岡県福岡市の大博多ホールにおいて、「学力セミナー 基礎・基本の反復で学力向上!」』を開催しました(後援:福岡市教育委員会、株式会社日本標準)。「基礎・基本の反復によって確かな学力を育んでいこう」という趣旨のもと開催したセミナーです。当日は、九州圏を中心に約200名の先生方が参加されました。ここでは、当日報告された、小中学校での「基礎・基本の反復学習」の取り組みの様子をダイジェストで掲載いたします。 ![]() |
| 小学校での学力向上の取り組み 佐賀県白石町立白石小学校 野中秀幸先生 |
| ●「チャレンジタイム」をスタート 本校で「チャレンジタイム」と呼んでいる、読み書き計算の反復練習をするモジュール授業と、学習生活習慣改善の取り組みを発表いたします。まだ1年間の取り組みですが、ありのままに報告いたします。 本校児童は明るく素直で、生徒指導上の問題行動等もあまりありません。また、指示された課題にはまじめに取り組みます。その反面、「論理的思考に弱い、集中力・持続力に欠ける、根気強さにやや欠ける、能力を十分発揮できずにいる(平成17年度白石小学校学校要覧より)」という短所があります。学力検査の結果では、平均的か、やや下回る部分もあるくらいの状況が続いていました。 そんな中で、平成18年1月に、陰山英男先生の提唱される、いわゆる「陰山メソッド」を導入するという方針を決め、実践に向けての準備に取りかかりました。当時、陰山先生が校長をされていた広島県尾道市立土堂小学校に伺い、モジュール授業や生活習慣改善の実践についてのお話を聞かせてもらいました。新年度になる前には、プリント類の選定や購入、モジュール授業の運用についての計画案の作成など、研究主任を中心に準備を進めました。今年度、4月5日に校内研修の場でモジュール授業の運用について検討し、4月12日から「チャレンジタイム」と名づけて授業を始めました。4月12日には、保護者の理解を得るために、学級懇談日に学校説明会を開き、「チャレンジタイム」や学習生活習慣改善への取り組みについて説明をいたしました。さらに、4月28日の授業参観では「チャレンジタイム」を保護者に公開しました。また、アンケートをとって保護者の「チャレンジタイム」に対する意識調査を実施しました。 ●「チャレンジタイム」の内容 「チャレンジタイム」は、火・水・木の1時間目に設定しています。15分を1モジュールとして「1.音読、2.計算、3.漢字の反復学習」を行います。週授業数のカウントは、音読・漢字が国語、15分×6コマで2時間、計算は算数で15分×3コマで1時間としてカウントしています。土堂小学校で教えていただいた「スピード・テンポ・タイミング」の3要素を重点にして取り組みました。 モジュール授業の最初は音読です。詩集や音読集などの中から、テンポよく読めるものをどの学年も使いました。慣れるにしたがって上級生は名文や難しい詩などにも挑戦していきました。初めは「スピード・テンポ・タイミング」のイメージがわかず、これまで実践してきた音読とどう違うのか戸惑いもありましたが、ビデオで研修をしたりしながら音読の方法を工夫し、元気で楽しくテンポよく、スピーディーに音読ができるようになりました。 計算については、100ます計算が中心ですが、初めは児童の実態に合わせて始めることにしました。2年生は10ますたし算、3年生は50ますたし算、4年以上は100ますたし算から始め、子どもの達成度を見ながらひき算、かけ算、わり算と進めていきました。少しの伸びでも認め、励ましながら子ども自身が自分の伸びを実感でき、それが意欲となってがんばることになり、どんどん記録を伸ばしていきました。図1の「4月に10ますたし算から始めた2年生の伸び」を示したグラフを見てください。最後に漢字です。漢字はプリントを繰り返し練習しています。5月くらいまでは、前の学年の漢字を確実に習得することから始め、そのあと学年の漢字の練習に移りました。漢字前倒し学習は、児童の反応を見ながらの実践でしたが、だいたい1学期初めに1学期分、2学期初めに2学期・3学期分の前倒しをしました。繰り返しプリント学習をすることで漢字の習得は大幅に上がりました。全校一斉での漢字テストでも、高い習得率を上げることができました。 ●子どもたちにつけさせたい力 本校では学習を進めていく上での土台となる力のことを「学習力」と名付けました。現在チャレンジタイムで育てる学習力を「集中力・持続力・克服力」の3つとしています。「スピード・テンポ・タイミング」でチャレンジタイムを続けていくと、読み・書き・計算のスキルアップとともに、明らかにこの3つの力が育っていくのがわかりました。この3つの力の土台の上に「知識・理解」「主体的に問題解決する資質・能力」「学ぶ意欲」などの能力が日々の学習で身につき、それが学力向上につながると考えています。 ●学習・生活習慣改善の取り組み 「はなまる大好きさん」という家庭学習の手引きを昨年度1年間かけて作り、今年度初めに各家庭に配布しました。これをもとに学習習慣についても見直し改善してもらうようにしました。さらに子どもたちの生活の実態を家庭へのアンケートで調査し、それをもとに改善をはかることにしました。2学期からは生活習慣改善の啓発用として「朝ごはんの効用」や「睡眠時間と学力の関係」などを伝えるための「I'm fine」というタイトルのお便りを発行してきました。保護者の意識は確実に高まっていると感じています。 ●成果 佐賀県では、18年12月に、5・6年生と中学1・2年生の全員を対象に学習状況調査が実施されました。グラフ1は、本校の5・6年児童の教科テストの結果です。佐賀県全体の通過率を100とした割合で本校の通過率を表しています。県の通過率も、先日の報告では全国に劣ることはないという報告がなされていますので、比較対象としては適当かと思っています。通過率で10ポイント前後も上回っている教科も少なくありませんでした。 ![]() グラフ2は、5年生の算数の観点別通過率です。モジュールで100ます計算ばかりして算数の力がつくのか疑問視されていますが、この結果を見ると数学的な考え方もよい結果であることがおわかりいただけると思います。本校の校内研究の課題として、数学的な考え方を養うことをめざして取り組んできたその成果もひとつ加わっていると思います。 「チャレンジタイム」の成果を別の側面から見ることもできます。それは「学力向上」という目標のもと、全校的な取り組みを1年間継続して行うことができたということです。教師が同じ方向を向いて子どもたちを伸ばそうと取り組んだことが原動力となって子どもたちの学習力を育て、それが成果となって現れたと、私たちは考えています。 ●課題 教師間で情報交換をしながら取り組みを進めましたが、回数的には不十分でした。他の教師の指導や他学年の児童の姿に学ぶこともレベルアップには欠かせません。 子どもの伸びに負けない工夫も重要です。子どもの伸びに応えきれないと、子どもはきっと意欲をなくしていくはずです。マンネリ化をどう乗り越えるかは大きな課題です。 そして、系統性をもった年間計画も必要です。今年度の実践をもとに19年度の年間計画を作りましたが、1年目と2年目では児童の力が違うことを配慮しなければいけません。 最後は、チャレンジタイムで国語2時間、算数1時間減じた学習活動をどうするかです。特に、国語2時間は、教材の精選、総合などとのリンクなどで今年度は切り抜けてきましたが、特に高学年は苦しい状況が続いていました。これら課題を解決しながら、いっそうの学力向上を目指して今後も取り組んでいきたいと考えています。 |
| 中学校での学力向上の取り組み 広島県呉市立東畑中学校 宇都宮富士夫先生 |
●中学における基礎・基本 私は、中学生にこそ100ます計算や漢字の基礎練習が重要だと考えています。私は理科を専門とする教員ですが、毎日授業をしている中で、基礎基本をやっていかないとこの子たちが大変なことになるということを本当に感じております。私は昨年3月まで、瀬戸内海の離島の全校生徒が32名という、小さな中学校に勤めておりました。島に塾はなく、「学校での学習がすべて」という環境でした。小さな島の学校ですから、1年の数学も担当していました。その中で、授業崩壊に近いようなことを経験いたしました。 そんなときに、呉市で陰山先生の講演を聞きました。「もうこれはやってみるしかないな」ということで、100ます計算を始めたのです。やってみたところ、それまでザワザワしていた教室が急にシーンとなりました。授業は遅れており、1学期が終わりに「正の数、負の数」が終わっていない状態でしたが、100ます計算をすることによって、授業のスピードが上がり、3月には教科書1冊全部が終わることができました。100ます計算をすることによって、子どもたちが授業に集中するようになったのです。 ●100ます計算の留意点 中学生はプライドを持っていて、「なんでこんなプリントをやらにゃいけんのや」というようなことを言います。そんなときは、「3けた×3けたのかけ算をするときに、答えを出すまでに実は25回の計算がある。だから、こういう計算を100ます計算で1個でもまちがえることになると、こういう3けた×3けたのかけ算が4問あった場合には、1問まちがえる割合になるので75点しか取れないよ」という例を出して、子どもたちを納得させています。 中学校の先生が「中学生が100ますなんてやるんですか?」とお聞きになりますが、子どもたちはほんとうにやります。実際に取り組んだ子どもたちは感想として、「最初は嫌だったけど、気がついたら100ますにのめりこんでいる自分がいた」というようなことをたくさん書いています。 ●小規模校での取り組み 4年前に1年生の担任になったときの子どもたちの状況は、計算ミスや、漢字のミスが多発でした。そこで、100ます計算のプリントと書き順プリントを毎日やっていきました。それを1年間やったときの学力テストの結果が表1です。国語や社会は全国平均より上がっておりましたが、数学にいたってはまだ全国平均に達していませんでした。 2年生からは、ちょっとパワーアップをして、小河勝先生が企画・監修をされた、表が100ます計算で裏が小学校の計算になっている「数学への基礎・基本プリント(日本標準刊)」を使って放課後取り組んでいきました。そのときに実施した、広島県の「基礎・基本状況調査」の結果が表2です。どの教科も85点をこえる成果を出すことができました。子どもたちにこういうことを知らせながら、自信を持たせながら取り組んでいきました。 ある生徒の例を紹介します。その子は家庭内暴力で不登校気味になって、豊浜中学校へ転校してきた子です。島に来てからも、「なんでこんな所に来にゃいけんのじゃ」と言って私を手こずらせた子です。ずっと基礎基本をやっていくにしたがって、勉強していくという気持ちが芽生えてきました。そして、3年生の後半になってからは、96点とか94点とかを取ることができるようになりました。私が担当した生徒のなかで、いちばん成績が上昇した例です。基礎基本をしっかりやるということは、子どもたちに自己肯定感を持たせるだけではなくて、子どもの力を伸ばしていくのだなということを、私は、豊浜中学校で学びました。 ●大規模校での取り組み 現在の東畑中学校へ転任してすぐに私は、それまでの取り組みを学年会で提案しました。すぐに「やってみましょう」ということで、取り組みが始まりました。 100ます計算を始めて何か月かたったとき、プリントを閉じているときにある男子生徒が「おれぶち速くなっとる」と言うのです。「え、小学校のときもやったんでしょ?」と聞いてみたら、「小学校のときはやったけれども、タイムや誤答数は記録していなかった」と言いました。100ます計算は、記録をとらずにやるとあまり効果は期待できないと思います。また、クラスで競争させると、「二度と100ます計算はしたくない」という声が出てきます。私は、「絶対に人と競争してはいけないよ」と言います。「人と競争するのではなくて、競争するのは前の日の自分だよ。」ということを徹底させています。そういうかたちで、子どもたちのやる気を喚起しています。 東畑中学校の場合は、新入生テストをやっていましたので、10月に、4月に実施したテストと全く同じテストを再度実施しました。その結果が表3です。 漢字テストは60点満点、計算は100点満点ですので漢字も計算も両方とも全体平均で8割を超えました。それを、4月に習得率が50%以下だった生徒に限って見ますと、全体平均の伸びに比べて、習得率が50%以下だった子のほうが、漢字がおよそ4.2ポイント、計算が約10.8ポイント上がっています。夏休みの校内研修などの際に、2・3年生にも働きかけて、全校的な取り組みにしたいということを提案し、3学期から2年生も実施することになりました。本校の2年生は、比較的落ち着かない学年だったこともあり、基礎基本の計算を朝やることにしました。実施後のアンケートでは、105人中81人、約80%の生徒が「100ます計算をやってよかった」と答えてくれました。2年の担当の先生からも「ざわざわしていたんだけれども、わずか5〜6分であっても教室に静寂さが戻ってきたね」と、感想が出されています。今後、新入生も含めて全校的な取り組みにしていこうと考えています。 ●全体的な取り組みを 基礎基本の計算の取り組みの中で、数学の先生のアシストがあるのとないのとでは大違いです。理科の教員が基礎基本の計算の取り組みなどを職員会議で提案しますと、「なんで理科の教員が数学の領域に踏み込むんだ」という言い方をされる先生が、ときどきいらっしゃいます。「それは違うんだよ」ということを何回も説明しますが、それが伝わらない場合も多いのです。今の中学生の現状を考えると、学年・学校のなかで話し合って、皆で何とかしていこうという気持ちを作って、学校全体で取り組んでいくことが大切だと思います。 ●数字とうまく付き合う 最後に、「数字とうまく付き合う」ということをお話しいたします。こういう取り組みをしていると、ただ点数を上げるだけでいいのか、ということを言われることがあります。考えてみますと、生徒に力がついているかどうかを保護者に説明するには、やはり数字でしかできません。過度な競争は必要ありませんが、離島の学校などでは、数字で子どもたちを鼓舞してあげるしかありません。「全国平均にくらべて君たちはこれだけがんばったんだよ。だから、どこの高校にがんばって行こうかな」という話ができます。数字とのつきあい方というのが非常に大事になってくると私は思っています。 |
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