学力セミナー in 沖縄
 日本標準教育研究所は、2007年8月30日に沖縄県浦添市のてだこホールにおいて、「『教育再生』を徹底反復で!」と題する公開セミナーを開催しました(後援 那覇市教育委員会、浦添市教育委員会、うるま市教育委員会、(資)学秀館、(株)日本標準)。「基礎・基本の反復によって確かな学力を育んでいこう」という趣旨のもと開催したセミナーです。ここでは、当日報告された、モジュール授業・徹底反復学習の具体的実践方法とその成果について、ダイジェストで掲載いたします。
山根僚介先生(広島県尾道市立土堂小学校教諭)
●モジュール授業とは
 「モジュール授業」とは、徹底反復学習を行う授業です。徹底した反復学習によって子どもたちの脳の力が向上する、と土堂小学校では考えています。「脳の力の向上」とは、「基本的な力の向上」と「学習に対する集中力の向上」の二つを意味しています。
 本校ではモジュール授業を、火・水・木曜日の1校時に実施しています。1年生は、2学期から実施します。45分という1単位時間を15分ごとに区切ります。モジュールは、「単位」とか「ひとつの区分」という意味ですので、本校は1モジュール15分ととらえて、45分の授業の中で3モジュール行うので、モジュール授業と呼んでいます。
 一単位時間のうち、一つめの内容を「国語科的内容」、二つめを「算数科的内容」、そして三つめを「担任の学級の裁量」としています。
 国語科的内容ではおもに音読を、算数科的内容では百ます計算を、学級の裁量では、英語や音楽、パソコンのタイピングなど、担任の裁量に任されて、さまざまなことを行っています。担任が、自分の裁量で自由に動かせる部分があると、子どものことを考えながら楽しく授業を考えられます。算数のあとに国語を実施してもかまわないのですが、先に音読で声を出してから、そのあと静かに計算をすると、百ますのタイムが上がります。先に計算して、その後音読でもよいのですが、音読をして脳を伸ばしてから、集中して百ます計算をする方がタイムがいいような気がします。

●学力向上の成果
 「モジュール授業」に取り組んだ結果、学力がどのように変化をしたかを見てみます。図2をご覧ください。これは広島県の5年生全員が行った「『基礎・基本』定着状況調査」の結果です。本校の結果は、4年連続で県平均を大きく上回っており、平成18年度の国語の平均は89点、算数は平均91点という結果になっています。他の調査でも同様の結果が得られています。モジュール授業の効果を見ていただけると思います。

●モジュール授業の実施上の留意点
 つぎに、モジュール授業を実施する場合に注意していただきたい点を四つに整理いたします。
 一つめは、教室内に集中した雰囲気をつくるということです。モジュール授業では特に集中した雰囲気が要求されます。惰性で反復学習をしていては、基礎・基本の力をつけることはできません。例えば、百ます計算のプリントを配るときに、皆さんはどのように配っていらっしゃいますか。配り始めてから配り終わるまでに、速くても30秒か1分はかかります。その間、子どもたちは待たなければいけません。私はプリントを配りません。朝登校したときに、百ます計算のプリントを入れた棚から子どもたちが自分で取っておいて、机の中に入れておくようにしています。すると、「おはようございます。始めます。よーいどん」で、できてしまいます。このように、集中力を高めるために工夫をしていかなければいけません。
 二つめは、スピード感とテンポの良さを大切にするということです。本校の職員室には、「スピード・テンポ・タイミング」ということばを大きく掲げています。中でも、スピードは、モジュール授業では特に重要です。音読をするにしても、正しく、テンポ良く、速くが必要です。そのスキルは、基礎・基本の力としてとても重要です。
 また、テンポとは、心地良いリズムのことを言います。和歌を読むときには、「いにしえの〜 奈良の都の八重桜〜」とカルタ取りみたいな読み方ではなく、「いにしえの、奈良の都の八重桜、今日九重ににほひぬるかな」とテンポ良く読みます。そうすることで、ある決まった一定の時間の中で何回も繰り返して、しかもリズム感良く読むことができます。和歌などは、何回も読んで、すらすら読めるようになってから意味を学ぶと、理解がとても速くなります。
 三つめの注意点は、上の一つめと二つめの達成から、好回転スパイラルを生み出していくということです。緊張感と集中力のある教室の雰囲気は、学習に対する高い集中力につながります。子どもたちの脳がパワーアップして、学習の速度がどんどん速くなります。例えば、学年当初15分間で百ます計算を1回実施していたとすれば、5月には2回できます。さらにパワーアップしていくと、15分間で3回できるようになります。もちろん最初からとばしてはいけません。十ますから始めていくなどの工夫をして、高い集中力を養っていくようにします。
 四つめに、子どもを見る力を養うということです。「スピード・テンポ・タイミング」は、大変難しい指導技術です。いたずらにスピードだけを上げようとしても、子どもはついてこれません。モジュール授業では、教室内の集中した雰囲気が最も要求されますが、本当に目の前の子どもたちが今集中しているかどうかを見抜く力が、教師には要求されるということです。子どもたちとの呼吸が合って、初めて「スピード・テンポ・タイミング」が機能するのです。本校では、先生方の力を高めていくために、学期に一回ぐらい、校内モジュールとして公開授業を行っています。お互いの授業を見合うことで授業技術を高めてきています。本当に集中した雰囲気とはどういうものか、本当に集中した子どもの姿とはどういうものか、私たちは絶えず、学ばなければいけないと思います。

●生活習慣の改善
 続いて、子どもたちの生活習慣の改善についてお話しします。本校では、生活習慣の改善と学力の向上は、車の両輪であるととらえています。どちらが欠けても前へ進んで行きません。睡眠不足で頭がぼーっとしている、そんな子どもが登校してきたところで、頑張って勉強しようと言ってもいい結果は期待できません。睡眠不足に加えて朝ごはんを食べていないとなると、気力さえ出てきません。やはり、学校から積極的に保護者や地域に対して、早寝早起き朝ごはんをキーワードにした基本的な生活習慣の改善を訴え続けていくことが重要だと思います。これを達成するには、保護者の協力なくしてはできません。保護者を、生活改善の取り組みに巻き込んでいくには、生活改善アンケートの実施が有効です。子どもたちに向かって「朝ごはん食べておいでよ」と言っても、家で用意されていなかったら食べられません。PTA総会などで、PTA会長や学校長が率先してそのことを伝えていくと、担任が話すよりも何倍も効果があります。学校全体でやっているんだということを意識づけることが大事です。
 早く寝て、早く起きて、朝ごはんを食べて、そして登校して、しっかり体を動かして、心も体も目覚めたところで授業でしっかり学習する、こうしたリズムが学力の向上につながり、安定した生活改善につながっていきます。子どもたちが大変落ち着いてきます。

●学校全体での取り組みを
 こうしたことは、全校で導入することが大事だと思います。全校で取り組めば、3月になったときに、新しい担任の先生に自分のクラスを安心して渡すことができます。引き続きモジュール授業ができるからです。しかし、いきなり週3回のモジュールの設定をしようと言っても、二の足を踏まれる方もいると思います。そんなときは、多くの学校でされている帯タイムをそれに当てるとよいと思います。少しずつ取り組みを拡大していけばよいのです。

●漢字前倒し学習
 最後に、漢字前倒し学習についてお話しします。普通、漢字の指導は、単元ごとにそこで出てくる新出漢字を学習します。こうすると、3月に習う漢字をほとんど練習する期間がないままつぎの学年が始まってしまうというのが実態です。土堂小学校では、前倒しで、ゴールデンウィークまでにその学年の配当漢字の学習を終えてしまいます。4月の国語の授業は全部漢字の学習です。45分間で、だいたい平均して10文字から15文字位の漢字を勉強します。そんなに覚えられるわけがない、と思われるかもしれませんが、だいじょうぶです。5月の初めにテストをしますが、平均点は50点くらいです。1学期が終わる頃には70点くらいは取れます。2学期は熟語練習に入ります。すると、2学期の終わりにはだいたい80、90点は取れるようになります。練習するだけですから、教師も子どももとても楽です。つらいのは最初だけです。一見乱暴な方法に見えますが、漢字の力は確実についています。全校で漢字検定を受検した結果、合格率が96.9%でした。
 漢字前倒し学習には、「○年の全漢字練習(日本標準刊)」を使っています。これ一冊でその学年で学習する漢字が全部入っています。音読してから書くという方法もとられています。一つのユニットに20文字入っていますから、それを10ユニット繰り返すとゴールです。ゴールが子どもたちにもはっきりと見えますから、やる気も出ます。
 子どもたちが元気になることで、学校が元気になると実感しています。
  ▲homeへ